ゼロからの高校物理 / 力学 / 運動の表し方

速さと速度・等速直線運動

公式

速さ = 移動距離 ÷ かかった時間
1 m/s = 3.6 km/h
変位Δx = x2 − x1
速度v = Δx / Δt(速度が一定のとき)
等速直線運動x = vt(時刻 0 に原点を出発したとき)

1速さと「1秒あたり」の意味

速さは「1 秒あたりに何 m 進むか」を表す量です。

自転車が、12 s(秒)かけて 60 m 進んだとします。同じ速さで走り続けたとすると、60 m を 12 等分して、1 秒あたり 5.0 m ずつ進んだことになります。この「1 秒あたり 5.0 m」を、5.0 m/s と書きます。(このページでは、問題の数値に合わせて 5.0 のように小数第1位まで書きます。5 m/s と書いても同じ速さです。)m/s は「メートル毎秒」と読みます。「/」は「あたり」という意味です。

1 秒あたりの長さを出すには、進んだ長さを、かかった秒数で割ります。

速さ = 移動距離 ÷ かかった時間
距離を m、時間を s で測ると、速さの単位は m/s になります。

実際の自転車は、途中で速くなったり遅くなったりします。それでも 60 m ÷ 12 s = 5.0 m/s と計算できます。これは「ならすと 1 秒あたり 5.0 m」という意味で、平均の速さといいます。(平均の速さは、次のページ「x-t グラフと v-t グラフ」で、往復の例でもう一度扱います。)

確認

「5.0 m/s」とは、どういう意味ですか。

答え

1 秒あたりに 5.0 m 進む速さ、という意味です。たとえば 10 s 走れば 50 m 進みます。

例題

ある人が一定の速さで走り、8.0 s で 56 m 進みました。速さは何 m/s ですか。

  1. 速さは「1 秒あたりに何 m 進むか」です。
  2. 56 m を 8.0 s で割ります。
  3. 56 ÷ 8.0 = 7.0 です。

答え: 7.0 m/s(1 秒あたり 7.0 m)

車の速さは、ふつう km/h(キロメートル毎時、1 時間あたりに何 km 進むか)で表します。1 m/s で 1 時間(3600 s)進むと、3600 m = 3.6 km 進みます。つまり、1 m/s と 3.6 km/h は同じ速さです。

1 m/s = 3.6 km/h

m/s の数字を km/h に直すときは 3.6 を掛けます(例: 5.0 m/s = 5.0 × 3.6 km/h = 18 km/h)。km/h の数字を m/s に直すときは 3.6 で割ります(例: 36 km/h = 36 ÷ 3.6 m/s = 10 m/s)。迷ったら 1 m/s = 3.6 km/h に戻って確かめます。

2原点・位置・正負

位置は「原点から、どちら向きに何 m の場所か」を、符号つきの数で表したものです。

「ポストから 3 m の場所」と言われても、ポストの右か左か分かりません。場所をはっきり言うには、基準の点と、向きの決まりが必要です。

この資料では、物体はまっすぐな道(一直線)の上だけを動くとします。その道に、数学の数直線のように目盛りを付けます。

目盛りの基準の点を原点といい、O と書きます。原点は 0 m の場所です。

この資料では、右を正の向き、左を負の向きとします。これは物理で決まっているわけではなく、自分たちで決めた約束です。問題によっては、左や上を正にすることもあります。

原点から右へ 3 m の場所の位置は、+3 m と書きます。原点から左へ 3 m の場所の位置は、−3 m と書きます。−3 m のマイナスは「長さが負」という意味ではありません。「原点の左側にいる」という意味です。原点からの距離は、+3 m の場所も −3 m の場所も 3 m です。

位置は記号 x で表し、「x = −3 m」のように書きます。

原点は、どこに置いてもかまいません。家を原点にすると、家の 300 m 右にある駅の位置は +300 m です。駅を原点にすると、同じ家の位置は −300 m になります。同じ場所でも、原点の置き方で位置の数は変わります。問題を解くときは、まず原点と正の向きを確かめます。

−10 m から +10 m の数直線の上の物体と、原点からの距離 正の向き 負の向き O(原点) 原点からの距離
位置 x m 原点からの距離 m

やってみよう

位置 x を +7.0 m にしてから、−7.0 m へ変えてください。「位置」と「原点からの距離」の数値は、それぞれどう変わりましたか。

分かること

位置は +7.0 m から −7.0 m に変わりますが、原点からの距離は 7.0 m のまま変わりません。

確認

止まっている物体の位置は、必ず 0 m ですか。

答え

いいえ。位置は「原点からどこにいるか」なので、原点以外の場所で止まっていれば 0 m ではありません。たとえば原点の右 5 m で止まっていれば、位置はずっと +5 m です。

例題

右を正の向きとします。原点の左 4.0 m にいる物体の位置 x を答えなさい。また、位置 x = +2.5 m の物体は、どこにいますか。

  1. 原点の左側は負の向きなので、位置にはマイナスを付けます。
  2. 原点から 4.0 m なので、x = −4.0 m です。
  3. x = +2.5 m のプラスは、原点の右側にいることを表します。
  4. 数の 2.5 は、原点からの距離が 2.5 m であることを表します。

答え: x = −4.0 m。x = +2.5 m の物体は、原点の右 2.5 m にいます。

3変位と道のり

変位は「出発点から終点まで、位置がどれだけ変わったか」、道のりは「実際に動いた長さ」です。

まっすぐな道で、家から 1 km 先の駅まで歩き、そのまま家に戻ったとします。歩いた長さは、行き 1 km と帰り 1 km を足して 2 km です。これを道のりといいます。道のりは、中学で習った「移動距離」と同じものです。一方、出発点(家)と終点(家)は同じ場所なので、位置は変わっていません。この「位置の変わり方」を変位といい、この例の変位は 0 です。

変位は、途中でどこを通ったかに関係なく、出発点と終点だけで決まります。道のりは、途中の動き方で変わります。どちらも、あとの図で確かめます。

動く前の位置を x1、動いた後の位置を x2 と書きます。x1 は「エックス・イチ」、x2 は「エックス・ニ」と読みます。右下の小さな数字は、2つの位置を区別するための番号です。掛け算や 2 乗ではありません。

変位は、後の位置から前の位置を引いて求めます。

変位のマイナスは「負の向き(左)へ動いた」という意味です。原点の左にいるかどうかとは別のことです。

変位は Δx と書きます。Δ は「デルタ」と読み、「後の値 − 前の値」(変化した量)を表す記号です。Δx は「Δ と x の掛け算」ではなく、2文字でひとまとまりの記号で、「x の変化」と読みます。

Δx = x2 − x1
Δ は「デルタ」と読み、「変化」を表す記号です。

道のりはいつも 0 以上で、負になりません。

原点を出発し、途中で通る点を経て終点へ動く物体の道すじと、出発点から終点への変位の矢印 x 道のり(動いた道すじ) 途中 x1 = 0.0 m x2

道すじは重ならないように2段に分けて描いています。縦の点線は長さに数えません。

Δx = () − 0.0 = m 道のり = + = m

やってみよう

終点を +3.0 m にしたまま、途中で通る点を +5.0 m から +8.0 m へ変えてください。変位と道のりは、それぞれいくつからいくつになりましたか。

分かること

道のりは 7.0 m から 13.0 m に変わりました。変位は +3.0 m のままで、変わりません。

確認

変位が 0 m なら、物体は動かなかったといえますか。

答え

いえません。動いて、出発点に戻ってきたときも変位は 0 m です(家から駅まで行って戻った例)。そのときの道のりは 0 m ではありません。

例題

原点を出発した物体が、x = +6.0 m まで進んでから向きを変え、x = −2.0 m まで戻りました。道のりと変位を求めなさい。

  1. 行きに動いた長さは、0 m から +6.0 m までなので 6.0 m です。
  2. 帰りに動いた長さは、+6.0 m から −2.0 m までなので 6.0 + 2.0 = 8.0 m です。
  3. 道のりは行きと帰りを足して、6.0 + 8.0 = 14 m です。
  4. 変位は、x1 = 0 m、x2 = −2.0 m なので、Δx = (−2.0) − 0 = −2.0 m です。
  5. マイナスなので、出発点から見て負の向き(左)に 2.0 m 動いたことになります。

答え: 道のり 14 m、変位 −2.0 m(負の向きに 2.0 m)

4速度

速度は「向きも合わせた速さ」で、一直線上では向きを + と − の符号で表します。

原点にいる2人が、どちらも 3 m/s で歩き出したとします。1人は右へ、もう1人は左へ歩くと、1 秒後の位置は +3 m と −3 m で、まったく違う場所にいます。速さだけでは行き先が分からないので、物理では向きも合わせた「速度」を使います。

右(正の向き)へ 3 m/s で進む速度は +3 m/s、左(負の向き)へ 3 m/s で進む速度は −3 m/s と書きます。

速度のマイナスは「遅い」という意味ではなく、「負の向きに進んでいる」という意味です。正の速度の「+」は省いて、3 m/s のように書くこともあります。

速さは、速度から符号を取ったものです。+3 m/s も −3 m/s も、速さは同じ 3 m/s です。止まっているときは、速度も速さも 0 m/s です。

数直線の上の台車と、台車から出る速度の矢印 正の向き 負の向き 速度 v
速度 v m/s 速さ m/s 向き

やってみよう

速度 v を +5.0 m/s にしてから、−5.0 m/s へ変えてください。矢印の向きと、「速さ」の数値は、それぞれどう変わりましたか。

分かること

矢印は右向きから左向きに変わりますが、矢印の長さと速さの数値(5.0 m/s)は変わりません。

時刻は「ストップウォッチがその瞬間に何秒を示しているか」です。時間は「ある時刻から別の時刻までの長さ」です。例: ストップウォッチが 2.0 s を示した時刻から 6.0 s を示した時刻までの時間は、6.0 − 2.0 = 4.0 s です。

時刻は記号 t で表します。位置と同じように、前の時刻を t1、後の時刻を t2 と書きます。かかった時間は Δt = t2 − t1 と書きます。Δ は項目3と同じ「後 − 前」の記号です。上の例なら、t1 = 2.0 s、t2 = 6.0 s で、Δt = 4.0 s です。

一定の速度で、時刻 1.0 s に x = +2.0 m、時刻 3.0 s に x = +8.0 m にいたとします。変位は Δx = (+8.0) − (+2.0) = +6.0 m、かかった時間は Δt = 3.0 − 1.0 = 2.0 s です。2.0 秒で +6.0 m 変わったので、1 秒あたりでは +6.0 ÷ 2.0 = +3.0 m/s です。これが速度です。だから、速度は変位をかかった時間で割って求めます。

v = Δx / Δt
速度が一定のとき。速度が途中で変わるときの扱いは次のページで見ます。

変位が負なら、速度も負になります。

確認

+3 m/s と −3 m/s では、どちらが速いですか。

答え

どちらも同じ速さ(3 m/s)です。違うのは進む向きだけです。

例題

一定の速度で一直線上を動く物体が、時刻 2.0 s に x = +12 m、時刻 6.0 s に x = −8.0 m にいました。速度を求めなさい。

  1. 前の位置は x1 = +12 m、後の位置は x2 = −8.0 m です。
  2. 変位は Δx = x2 − x1 = (−8.0) − (+12) = −20 m です。
  3. かかった時間は Δt = 6.0 − 2.0 = 4.0 s です。
  4. 速度は v = Δx / Δt = (−20) ÷ 4.0 = −5.0 m/s です。
  5. マイナスなので、負の向き(左)に進んでいます。

答え: −5.0 m/s(負の向きに速さ 5.0 m/s)

5等速直線運動

時刻 0 に原点を出発して一定の速度 v で進むと、時刻 t の位置は x = vt です。

一直線上を、一定の速度で進む運動を等速直線運動といいます。速さも向きも変わらない運動です。

ここでは、ストップウォッチを押した瞬間(時刻 0)に、物体が原点にいるとします。

速度 +3 m/s で進むとき、1 秒ごとに位置が +3 m ずつ変わるので、時刻と位置は次の表のようになります。位置の数は、どの時刻でも「3 × 時刻の秒数」です。

時刻 t(s)0123
位置 x(m)0+3+6+9

速度を v、時刻を t とすると、時刻 t の位置は x = v × t です。掛け算の記号を省いて x = vt と書きます。

x = vt
時刻 0 に原点を出発したとき
時刻 0 に原点を出発した台車の、時刻 t での位置と、1 秒ごとの位置の点、速度の矢印 x v x
x = v × t = () × 位置 x m

やってみよう

速度 v を +4.0 m/s にしてから、時刻 t を 1.0 s → 2.0 s → 3.0 s と変えてください。位置 x は、1 秒ごとにいくつ変わりますか。

分かること

+4.0 m → +8.0 m → +12.0 m と、1 秒ごとに +4.0 m ずつ変わります。速度が +3.0 m/s のときに 1 秒ごとに +3.0 m ずつ変わったのと同じく、速度の数と同じだけ変わります。

速度が −2 m/s なら、1 秒ごとに位置が −2 m ずつ変わります。時刻 3 s の位置は x = (−2) × 3 = −6 m で、原点の左 6 m にいます。v が負のとき、t が 0 より大きければ x も負になり、物体は原点の左側にいます。

x = vt が位置になるのは、時刻 0 に原点にいたときだけです。たとえば時刻 0 に x = +10 m にいて、速度 +2 m/s で 5 s 進むと、位置は +20 m です。このとき vt = 2 × 5 = 10 m は位置ではなく、時刻 0 からの変位(+10 m から +20 m への変化)です。原点以外から出発する運動の式は、このページでは扱いません(等加速度直線運動のあとで扱います)。

確認

時刻 0 に原点以外の場所から出発したとき、vt は位置を表しますか。

答え

表しません。vt は時刻 0 からの変位(位置がどれだけ変わったか)です。

例題

時刻 0 に原点を出発し、一定の速度 3.0 m/s で一直線上を進む台車は、時刻 8.0 s にどの位置にいますか。

  1. 時刻 0 に原点を出発し、速度が一定なので、x = vt が使えます。
  2. v = 3.0 m/s、t = 8.0 s を代入します。
  3. x = 3.0 × 8.0 = 24 m です。

答え: x = +24 m(原点から正の向きに 24 m)

練習問題

どの問題も、一直線上の運動で、右を正の向きとします。

パターン1 速さの意味と、km/h と m/s の換算

問1一定の速さで走る自転車が、8.0 s で 120 m 進みました。速さは何 m/s ですか。また、それは何 km/h ですか。

答えを見る

15 m/s、54 km/h

1 秒あたりに進む長さは 120 ÷ 8.0 = 15 m なので 15 m/s。km/h に直すので 3.6 を掛けて、15 m/s = 15 × 3.6 km/h = 54 km/h

問272 km/h で一定の速さで走る車は、4.0 s で何 m 進みますか。

答えを見る

80 m

m/s に直すので 3.6 で割り、72 km/h = 72 ÷ 3.6 m/s = 20 m/s。1 秒あたり 20 m 進むので、4.0 s では 20 × 4.0 = 80 m。72 × 4.0 = 288 としないこと(時間が s なので、速さも m/s に直してから掛ける)

パターン2 位置・変位・道のり

問3原点を出発した物体が、x = +7.0 m まで進んでから向きを変え、x = +2.0 m で止まりました。道のりと変位を求めなさい。

答えを見る

道のり 12 m、変位 +2.0 m

道のり = 7.0 + (7.0 − 2.0) = 7.0 + 5.0 = 12 m。変位 Δx = (+2.0) − 0 = +2.0 m

問4x = +3.0 m にいた物体が、x = −5.0 m まで進んでから向きを変え、x = −2.0 m で止まりました。道のりと変位を求めなさい。

答えを見る

道のり 11 m、変位 −5.0 m(負の向きに 5.0 m)

行きの長さ = (+3.0) − (−5.0) = 8.0 m、帰りの長さ = (−2.0) − (−5.0) = 3.0 m、道のり = 8.0 + 3.0 = 11 m。変位 Δx = x2 − x1 = (−2.0) − (+3.0) = −5.0 m。出発点が原点ではないので、終点の位置 −2.0 m をそのまま変位にしないこと

パターン3 速度と x = vt

問5一定の速度で一直線上を動く物体が、時刻 1.0 s に x = −6.0 m、時刻 6.0 s に x = +9.0 m にいました。速度を求めなさい。

答えを見る

+3.0 m/s(正の向きに速さ 3.0 m/s)

Δx = (+9.0) − (−6.0) = 15 m、Δt = 6.0 − 1.0 = 5.0 s、v = 15 ÷ 5.0 = +3.0 m/s。後の位置 9.0 をそのまま 5.0 で割らないこと

問6時刻 0 に原点を出発し、一定の速度で一直線上を進む物体が、時刻 2.0 s に x = −6.0 m にいました。速度を求めなさい。また、時刻 5.0 s にはどの位置にいますか。

答えを見る

速度 −3.0 m/s、時刻 5.0 s の位置 x = −15 m(原点の左 15 m)

時刻 0 に原点を出発しているので x = vt が使える。−6.0 = v × 2.0 より v = (−6.0) ÷ 2.0 = −3.0 m/s。時刻 5.0 s では x = (−3.0) × 5.0 = −15 m

つまずきやすいところ

まとめ

公式

速さ = 移動距離 ÷ かかった時間
1 m/s = 3.6 km/h
変位Δx = x2 − x1
速度v = Δx / Δt(速度が一定のとき)
等速直線運動x = vt(時刻 0 に原点を出発したとき)