このページは「速さと速度・等速直線運動」の続きです。そこで学んだ速さ(移動距離 ÷ かかった時間)、道のり(実際に動いた長さ。負にならない)、位置 x、変位 Δx = x2 − x1、速度 v = Δx / Δt、x = vt(時刻 0 に原点を出発したとき)を使います。右を正の向きとします。
公式
横軸に時刻、縦軸に位置をとったグラフが x-t グラフで、その傾きが速度です。
時刻 0 に原点を出発し、速度 +2 m/s で進む物体を考えます。1 秒ごとの位置は、次の表のようになります。
| 時刻 t(s) | 0 | 1 | 2 | 3 |
|---|---|---|---|---|
| 位置 x(m) | 0 | +2 | +4 | +6 |
横軸に時刻 t、縦軸に位置 x をとり、表の4つの組を点として打ちます。たとえば時刻 2 s、位置 +4 m の組は、点(2 s, 4 m)になります。
点(2 s, 4 m)は、「時刻 2 s に、原点から正の向きに 4 m の場所にいる」という意味です。縦軸は高さではなく位置です。点が上にあるほど、位置 x が大きい(より右にいる)ことを表します。
点を結んだ線が x-t グラフです。等速直線運動では、点がまっすぐに並ぶので、x-t グラフは直線になります。グラフの線は、物体が実際に通った道ではありません。物体は一直線の道を進んでいるだけで、グラフは「いつ、どこにいたか」を並べた記録です。
表の時刻 1 s と 3 s を比べます。時刻は 3 − 1 = 2 s 進み、位置は (+6) − (+2) = +4 m 変わっています。グラフでは、これが「横に 2 進むと縦に 4 上がる」ことにあたり、傾きは 4 ÷ 2 = 2 です。一方、前のページの速度は v = Δx / Δt = (+4) ÷ 2 = +2 m/s です。傾き(縦の変化 Δx ÷ 横の変化 Δt)と速度は、同じ計算です。だから x-t グラフの傾きが速度です。
グラフの線は、物体が通った道ではありません。
やってみよう
時刻 t は 2.0 s のまま、速度 v を +2.0 m/s から −2.0 m/s へ変えてください。グラフは右下がりになります。このとき物体は坂を下っていますか。時刻 2 s の点の位置 x はいくつですか。
坂を下っているのではありません。物体はまっすぐな道を、負の向き(左)へ進んでいます。時刻 2 s の点は (2 s, −4 m) で、「時刻 2 s に原点の左 4 m にいる」という意味です。
速度が −2 m/s なら、表は 0, −2, −4, −6 m となり、グラフは右下がりになります。右下がりは「負の向きに進んでいる」という意味です。
止まっている物体は、時刻が進んでも位置が変わりません。たとえば x = +5 m で止まっていれば、表は +5, +5, +5, +5 m です。だから、グラフは水平になります。
速度が +2 m/s なら、グラフは 1 秒で 2 m 上がり、+4 m/s なら 4 m 上がります。同じ 1 秒で位置が大きく変わるほど、つまり速さが大きいほど、傾きは急になります。右下がりでも同じで、−4 m/s のグラフは −2 m/s のグラフより急に下がります。
確認
x-t グラフの線は、物体が通った道ですか。
いいえ。線は「各時刻にどの位置にいたか」をつないだ記録です。
例題
時刻 0 に原点を出発した物体の x-t グラフは直線で、点(1.0 s, 4.0 m)と点(4.0 s, 16 m)を通ります。速度を求めなさい。
答え: +4.0 m/s(正の向きに速さ 4.0 m/s)
横軸に時刻、縦軸に速度をとったグラフが v-t グラフで、グラフと横軸で囲まれた面積が変位です。
時刻 0 に原点を出発し、速度 +3 m/s で 4 s 進む物体を考えます。速度は一定なので、どの時刻でも +3 m/s です。比べるために、前のページの x = vt で求めた位置も並べます。
| 時刻 t(s) | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 |
|---|---|---|---|---|---|
| 速度 v(m/s) | +3 | +3 | +3 | +3 | +3 |
| 位置 x(m) | 0 | +3 | +6 | +9 | +12 |
横軸に時刻 t、縦軸に速度 v をとり、時刻と速度の組を点として打ちます。点(2 s, 3 m/s)は、「時刻 2 s に、正の向きに速さ 3 m/s で進んでいる」という意味です。位置ではありません。速度が一定なので、点は同じ高さに並び、v-t グラフは横軸に平行な直線になります。この線も、物体が通った道ではありません。
時刻 0 s から 1 s までの、グラフと横軸の間の細長い長方形を考えます。縦は 3 m/s、横は 1 s なので、面積は 3 × 1 = 3 です。表では、この 1 秒間に位置が 0 m から +3 m へ、+3 m 変わっています。1 秒分の面積が、1 秒間の変位と同じです。
0 s から 4 s までの長方形は、縦 3 × 横 4 = 12 です。表の 4 s 間の変位は 12 − 0 = +12 m で、面積と同じです。これは前のページの x = vt(3 × 4 = 12)と同じ計算です。長方形の面積(縦 v × 横 t)が vt になっているからです。単位も、m/s × s = m で、長さの単位になります。
グラフの線は、物体が通った道ではありません。
やってみよう
時刻 t を 4.0 s にしたまま、速度 v を +3.0 m/s から −3.0 m/s へ変えてください。塗られた長方形はどこに移り、変位の数値はどう変わりましたか。
長方形は横軸の上から下へ移り、変位は +12.0 m から −12.0 m に変わります。大きさ(12 m)は同じで、符号だけが変わります。
速度が −3 m/s なら、点は横軸より下に並び、長方形も横軸より下にできます。このときの面積は (−3) × 4 = −12 と、負の値として数えます。負の向きに 12 m 進んだ、つまり変位 −12 m という意味です。
面積が表すのは、その時間の間の変位(位置の変化)です。時刻 0 に原点にいたときだけ、面積がそのまま位置にもなります。
確認
v-t グラフで、横軸より下にある面積は、何を表しますか。
負の向きへの変位です。横軸より下の面積は、負の値で数えます。
例題
ある物体の v-t グラフは、時刻 0 〜 5.0 s で v = 4.0 m/s の横線です。この 5.0 s 間の変位を求めなさい。
答え: +20 m(正の向きに 20 m)
平均の速さは「道のり ÷ かかった時間」、平均の速度は「変位 ÷ かかった時間」で、折り返す運動では大きさが違います。
実際の運動では、途中で速さや向きが変わることがよくあります。そのようなときは、全体をならした値として「平均」を使います。
平均の速さは、道のりをかかった時間で割ったものです。前のページの「速さ = 移動距離 ÷ かかった時間」と同じ計算です。平均の速度は、変位をかかった時間で割ったものです。前のページの速度と同じ v = Δx / Δt の形ですが、速度が途中で変わるときは、これを平均の速度と呼びます。平均の速さは道のりで割るので符号がなく、平均の速度は変位で割るので符号があります。
原点を出発した人が、10 s かけて x = +30 m まで歩き、次の 10 s で原点に戻ったとします。次の表に、行き・帰り・全体の値をまとめます。
| 区間 | かかった時間 | 道のり | 変位 |
|---|---|---|---|
| 行き(0 m → +30 m) | 10 s | 30 m | +30 m |
| 帰り(+30 m → 0 m) | 10 s | 30 m | −30 m |
| 全体 | 20 s | 60 m | 0 m |
全体の平均の速さは 60 ÷ 20 = 3.0 m/s です。全体の平均の速度は 0 ÷ 20 = 0 m/s です。ずっと歩いていたのに 0 m/s になるのは、出発点に戻って変位が 0 だからです。
途中で向きを変えない運動では、道のりと変位の大きさが同じなので、平均の速さと平均の速度の大きさも同じになります。負の向きにだけ進んだときも、大きさは同じで、平均の速度にマイナスが付くだけです(例: −3.0 m/s で 4.0 s 進むと、平均の速さ 3.0 m/s、平均の速度 −3.0 m/s)。折り返すと、道のりのほうが変位の大きさより長くなるので、平均の速さのほうが大きくなります。
確認
平均の速さと平均の速度の大きさが等しくなるのは、どんな運動のときですか。
途中で向きを変えない(折り返さない)運動のときです。
例題
原点を出発した人が、6.0 s かけて x = +30 m まで歩き、そこから 4.0 s かけて x = +10 m まで戻りました。この 10 s 間の平均の速さと平均の速度を求めなさい。
答え: 平均の速さ 5.0 m/s、平均の速度 +1.0 m/s
どの問題も、一直線上の運動で、右を正の向きとします。
問1ある物体の x-t グラフは、原点と点(5.0 s, −20 m)を通る直線です。速度を求めなさい。
−4.0 m/s(負の向きに速さ 4.0 m/s)
傾き = (−20 − 0) ÷ (5.0 − 0) = −4.0 m/s。右下がりなので負の向きに進んでいる
問2ある物体の x-t グラフは、点(0 s, 10 m)と点(4.0 s, 30 m)を通る直線です。速度を求めなさい。
+5.0 m/s(正の向きに速さ 5.0 m/s)
Δx = 30 − 10 = 20 m、Δt = 4.0 − 0 = 4.0 s、傾き = 20 ÷ 4.0 = +5.0 m/s。縦軸の 30 m をそのまま 4.0 で割らないこと(時刻 0 に x = 10 m にいるので、4.0 s 間の変位は 20 m)
問3ある物体の v-t グラフは、時刻 0 〜 5.0 s で v = −4.0 m/s の横線です。この 5.0 s 間の変位を求めなさい。
−20 m(負の向きに 20 m)
面積 = (−4.0) × 5.0 = −20。横軸より下なので負の変位
問4ある物体の v-t グラフは、時刻 0 〜 4.0 s で v = +5.0 m/s、4.0 〜 6.0 s で v = −3.0 m/s です。0 〜 6.0 s の変位と道のりを求めなさい。
変位 +14 m、道のり 26 m
前半の面積 = 5.0 × 4.0 = +20(正の向きに 20 m)。後半の面積 = (−3.0) × 2.0 = −6.0(負の向きに 6.0 m)。変位は符号つきで足して、20 + (−6.0) = +14 m。道のりは実際に動いた長さなので、後半も 6.0 m として足し、20 + 6.0 = 26 m
問5原点を出発した人が、8.0 s かけて x = +40 m まで進み、そこから 2.0 s かけて x = +20 m まで戻りました。この 10 s 間の平均の速さと平均の速度を求めなさい。
平均の速さ 6.0 m/s、平均の速度 +2.0 m/s
道のり = 40 + (40 − 20) = 60 m、平均の速さ = 60 ÷ 10 = 6.0 m/s。変位 = (+20) − 0 = +20 m、平均の速度 = 20 ÷ 10 = +2.0 m/s
問6x = +10 m にいた物体が、5.0 s かけて x = +25 m まで進み、そこから 10 s かけて x = −5.0 m まで戻りました。この 15 s 間の平均の速さと平均の速度を求めなさい。
平均の速さ 3.0 m/s、平均の速度 −1.0 m/s(負の向きに 1.0 m/s)
道のり = (25 − 10) + {25 − (−5.0)} = 15 + 30 = 45 m、平均の速さ = 45 ÷ 15 = 3.0 m/s。変位 Δx = (−5.0) − (+10) = −15 m、平均の速度 = (−15) ÷ 15 = −1.0 m/s。出発点が原点ではないので、終点の位置 −5.0 m を変位にしないこと
公式
瞬間の速度は、時間の幅を短くしながら平均の速度を調べていったときに、近づいていく値です。
坂を転がり始めたボールのように、だんだん速くなる運動を考えます。時刻 t 秒のときの位置が t2 m(t × t m)になる運動だとすると、位置は次のようになります。
| 時刻 t(s) | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 位置 x(m) | 0 | 1 | 4 | 9 | 16 | 25 |
1 秒ごとに進む長さが 1, 3, 5, 7, 9 m と増えているので、だんだん速くなっています。
表の点を打つと、x-t グラフは直線ではなく、曲がった線になります。点 P(2 s, 4 m)は、「時刻 2 s に、原点から正の向きに 4 m の場所にいる」という意味です。
知りたいのは、時刻 2 s のちょうどその瞬間の速度(瞬間の速度)です。しかし、一瞬の間には時間も変位も 0 なので、「一瞬の変位 ÷ 一瞬の時間」は計算できません。そこで、一瞬を割り算するのではなく、P から少しだけ後の点 Q までの、短い時間の平均の速度を調べます。
P から Q までの時間を Δt とすると、平均の速度は Δx ÷ Δt です(項目3の「平均の速度 = 変位 ÷ かかった時間」)。x-t グラフでは、これは P と Q を結ぶ直線 PQ の傾きです(項目1と同じく、縦の変化 ÷ 横の変化で求めます)。
Δt を 2.0 s、1.0 s、0.5 s、0.1 s と小さくしていくと、次のようになります。
| Δt(s) | 2.0 | 1.0 | 0.5 | 0.1 |
|---|---|---|---|---|
| Q の時刻(s) | 4.0 | 3.0 | 2.5 | 2.1 |
| Q の位置(m) | 16 | 9 | 6.25 | 4.41 |
| Δx(m) | 12 | 5 | 2.25 | 0.41 |
| 平均の速度 Δx ÷ Δt(m/s) | 6.0 | 5.0 | 4.5 | 4.1 |
平均の速度は 6.0、5.0、4.5、4.1 m/s と、だんだん 4.0 m/s に近づいていきます。この近づいていく値 4.0 m/s が、時刻 2 s での瞬間の速度です。
やってみよう
本文の表にない値で確かめます。時間の幅 Δt を 3.0 s → 1.5 s → 0.3 s と小さくしてください。「平均の速度」の数値はそれぞれいくつですか。紫の実線(直線 PQ)は、点線の接線とどうなっていきますか。
平均の速度は +7.0 → +5.5 → +4.3 m/s と小さくなり、表のときと同じく +4.0 m/s に近づきます。紫の実線は、点線の接線にだんだん重なっていきます。
Q を P へ近づけていくと、直線 PQ の傾きが 4.0 に近づき、直線 PQ そのものもある1本の直線に近づいていきます。この「Q を P へ近づけたとき、直線 PQ が近づいていく直線」を、P での接線といいます。だから、瞬間の速度は x-t グラフの接線の傾きです。車のスピードメーターが示しているのは、この瞬間の速さ(瞬間の速度から符号を取ったもの)です。
確認
瞬間の速度は、x-t グラフの何の傾きですか。
その時刻の点での接線の傾きです。